活動情報

日本水産学会秋季大会ミニシンポジウム「フグ食の安全性確保」

東北大学2015(平成27)年9月22日~25日に宮城県仙台市にある東北大学川内キャンパスで開催された水産学会秋季大会初日に、「フグ食の安全性について」のミニシンポジウムが専門家だけでなく一般にも公開されるとのことで拝聴してきました。

今回のミニシンポジウムは「フグ食の安全性確保-日本沿岸フグ類の分類と毒性の見直し」をメイン議題としていました。
本来熱帯・亜熱帯海域に生息するドクサバフグが近年日本沿岸見られるようになり、それに伴いフグ中毒が発生しています。
その他、従来の毒性を超える高毒性化したフグや、麻痺性貝毒によるフグの毒化、交雑種フグの頻出など、フグ食の安全性を脅かす新たな問題が浮上してきています。
日本産フグ類の分類と毒性に関する最近の知見をとりまとめ、現状の問題点やそれに対応した近未来のフグ食のリスク管理について議論することを目的として開催され、以下の講演が行われました。

1.日本沿岸に見られるフグの分類

発表者:国立科学博物館名誉研究員 松浦敬一氏

日本の沿岸には7属47種のフグが分布しており、これは全世界の25%にあたり日本のフグ類の多様性は極めて高い。しかし日本産フグ類は属レベルの分類においては問題がないが種レベルとなると未解決の点が多い。世界においてもフグ類の種分類は難しいとされているので、画像や図を多用したガイド(ネット上)を公開予定である。

2.交雑フグの毒性

発表者:長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科教授 高谷智裕氏

自然交雑フグについては、両親種とも可食である部位のみを可食部位と定められているが、自然交雑フグの毒性や毒蓄積部位についてこれまで実測したデータがないことや、形態学的手法では両親種を同定するのが困難なため安全性に問題がある。自然交雑フグと人工交雑フグで調査を行ったが、やはりトラフグ属の交雑種はさまざまなパターンを持って出現するので毒性の解明と安全性の確保は難しい。

3.沖縄地区のフグの毒性

発表者:国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部 大城直雅氏

九州沿岸域でのドクサバフグの捕獲やそれに伴う食中毒の発生など、熱帯・亜熱帯域に生息する魚種が温帯域へ分布域を拡大することが懸念される。日本近海域におけるフグの毒性については詳細に調査されているが亜熱帯産フグについてのデータが乏しいため、沖縄沿岸産のフグの毒性について検討を行った。

4.東北地区のフグの毒性

発表者:北里大学海洋生命科学部教授 佐藤茂氏

一般的にヒガンフグとコモンフグは筋肉が可食部位であるが、東北太平洋沿岸の一部海域で漁獲されたものについては筋肉の毒性が基準値を大幅に超える固体が頻出ことが明らかになっており、食用不可とされている。この調査から30年が経過し、東北大震災の大津波のどのように影響したかも含めヒガンフグ、コモンフグ、ショウサイフグを調査し、日本海側の秋田県産と比較した。

5.日本産フグの毒成分

発表者:東北大学大学院農学研究科教授 山下まり氏

日本産フグの毒成分はテトロドトキシン類とサキシトキシン類に大別される。日本産の場合テトロドトキシン類が主な毒成分であり、サキシトキシン類は微量であることが多い。ここでは日本産のフグに存在するテトロドトキシン類縁体とサキシトキシン類縁体の構造と活性、分布について述べる。

6.日本におけるフグの安全性確保

発表者:厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課 齊藤恵子氏

厚労省としては家庭におけるフグの素人料理および飲食店におけるフグの有毒部位の提供を原因とする食中毒の防止対策を中心に、地方自治体や関係団体と引き続き連携して、国内で流通するフグの安全確保に努めていく。

傾聴してきた感想

学者や専門家ではないため、学術的なことは理解できないことも多くありましたが、フグの流通やフグ食に関る者の一人として知っておかねばならないことがたくさんあり、大変興味深く聴かせていただきました。

フグは日本人に馴染み深い魚でありながら、その分類・生態については不明な点が多く、今後もまだまだ研究を進めるべき対象だということを改めて感じました。
個人的にはこのような毒魚の扱いを都道府県の条例任せにしておいていいのだろうかと考えます。

今回はフグ毒に特化したシンポジウムでしたが、今後も可能な限り参加していきたいと思っています。