身体中が鋭いトゲに覆われ、危険を感じると丸く膨らむ姿が印象的な「ハリセンボン」。
ハリセンボンはふぐの仲間としても知られていますが、どんな魚なのか実はあまりご存知ないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、ハリセンボンの生態や他のふぐとの違いなどについてご紹介します。
ハリセンボンの生態と特徴
ハリセンボンは、フグ目ハリセンボン科に分類されるフグの一種です。日本でみられるハリセンボン科のフグはハリセンボン、ヒトヅラハリセンボン、ヤセハリセンボン、ネズミフグの4種です。
ちなみに、よく知られているトラフグやマフグはフグ目フグ科に分類されます。
ハリセンボンは世界中の温帯域や亜熱帯域に生息しており、日本では対馬海流に乗って山陰や北陸に大量に回遊し、浜に打ち上げられることがあります。
身体の大きさは30cm前後ほどで、体表が鋭いトゲで覆われているのが最大の特徴です。トゲはウロコが進化してできたとされています。「ハリセンボン」という名前ではありますが、実際には針状のトゲは1000本もなく、300〜400本ほどのトゲが身体中に生えています。
鋭いトゲを持っているハリセンボンは自然界には天敵がいないとされている一方で、その独特な見た目が人気を博しペットとして飼育されることも多い魚です。
ふぐとハリセンボンの違いとは?
ふぐとハリセンボンは危険を感じると身体を丸く膨らませたり、貝や甲殻類をも噛み砕く強靭な歯を持っているなどの共通点がありますが、異なる点もいくつかあります。
ハリセンボンには毒がない?
多くのふぐは「テトロドトキシン」という猛毒を持っていますが、ハリセンボンの身や皮には毒がありません。
厚生労働省もハリセンボンの皮・筋肉・精巣を可食部位としていますが、毒を持たないフグであってもその皮・筋肉・精巣以外は食べてはいけないことになっています。必ずふぐ処理師等有資格者の処理したものを食べるようにしましょう。
ふぐとは歯の本数や並び方が異なる
強靭な歯を持つふぐとハリセンボンですが、歯の本数や並び方には違いがあります。フグ科のふぐは上下に2本ずつ歯板が生えているのに対して、ハリセンボンは上下に大きな歯板が1本ずつ生えています。
1本の歯だけでも貝やウニ、甲殻類などをバリバリと噛み砕く力がありますので取り扱いには十分注意が必要です。
沖縄で親しまれているハリセンボンの名物料理
ハリセンボンは特に沖縄で親しまれており、方言で「アバサー」と呼ばれています。
沖縄では、スーパーや市場などであらかじめ皮が剥ぎとられたハリセンボンの身が多く販売されており、ブツ切りにして煮込む「アバサー汁」という郷土料理が有名です。
また、ハリセンボンは唐揚げや鍋の具材として調理されることが多い魚です。白身であっさりとしていてクセがなく、弾力のある食感が楽しめます。
しかし、ハリセンボンは身肉が少ないためお刺身として食べるのはあまり向いていません。
一方トラフグやマフグの場合は、身を薄く引いて美しく盛り付けられた「ふぐ刺し」が有名ですので、こちらは本場・下関を訪れた際にコリっとしたとらふぐの食感をお楽しみください。
食べるだけではなく、そのふくれた状態の形の面白さからふく提灯やはく製にされてお土産として売られているものも各地でよく目にします。あの針(とげ)は本当に痛そうですね。
まとめ
ハリセンボンの生態や他のふぐとの違いについてご紹介しました。
「ハリセンボン」という名前でありながら、実はトゲが300〜400本ほどしかないことに意外に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
また、ハリセンボンは自然界に天敵がいないという点も珍しく、これまでどのような進化を経て高い防衛能力を身につけたのか謎は深まるばかりです。
ふぐ料理をいただく際は、ぜひ仲間であるハリセンボンとの食べ比べもしてみると、新しい発見があるかもしれませんね!