ふぐの免許・資格

消費者の安心安全のために絶対に必要なふぐの免許

トラフグ

消費者の安心安全のため、毒をもつ魚であるふぐを販売したり、食事として提供したりするには各都道府県の定めるふぐ条例に基づいて、講習を受け学科・実技試験等に合格したものを有資格者とする免許が発行されています。

都道府県によってその名称は「ふぐ調理師」「ふぐ処理師」「ふぐ包丁師」「ふぐ取扱者」「ふぐ取扱登録者」「ふぐ調理者」など、統一されていないのが現状です。
国家資格ではないので、原則資格を取得した都道府県に限り有効な免許になっています。

都道府県によって異なる制度や難易度

ふぐに関する免許は、各都道府県によって受講・受験資格取得の条件は異なり、学科・実技試験の難易度にもかなり開きがあります。

例えば最も取得が難しいと言われる山口県では、3年以上ふぐ処理業務に従事することが講習の受講及び学科・実技試験の受験資格になっています。
しかし、受講・受験資格が必要のない自治体や、講習のみで学科・実技試験を行わずに免許を発行する自治体もあり、免許制度自体を実施していない自治体も存在するなど、免許取得条件はまちまちです。

ふぐを食す地域が限定的だった時代には特に必要・重要視されない免許でしたが、情報や流通が格段に発達し、ふぐの漁場やふぐ養殖場も全国に広がり、全国でふぐが食べられるようになった近代において、従来のままの条件では問題があるのではないでしょうか。

流通の障壁にも…

ふぐの免許やふぐ条例が各都道府県で異なるということは、当然流通にも影響してきます。

ひとつの例として、東京都はこれまで免許がない流通業者や飲食店は、たとえ完全に除毒されたふぐの「みがき」であっても取り扱うことができませんでした。
そのため都内の消費者は、インターネット通販等で下関から「みがき」を購入しなければ、ふぐを食べることはできませんでした。
しかし、平成24年に条例が改正され、申請すれば免許がない業者でも「みがき」を取り扱うことができるようになったのです。まさに、時代の変化に条例が対応した好例です。

別の例としては、ある食品メーカーがふぐを原料とした加工食品を製造し、全国の量販店で販売しようとした場合、それぞれの自治体のふぐ免許制度やふぐ条例を精査せねばならず、その上で販売できない自治体があるかもしれません。
しかし実際には全国の消費者は通販で購入できるという矛盾が存在するのです。

ふぐの免許と更新制度

多くの資格制度がそうであるように免許の更新制度を設けていない、あるいは簡単な講習を受講するのみで更新を認める自治体がほとんどなのが現状です。

フグ毒は「テトロドトキシン」という少量でもヒトを殺傷する猛毒を有するにもかかわらず、試験のためだけに捌きを練習したようなペーパー資格者が存在していては安心安全とは言えません。

その心配を解消するためにも、せめて5年ごとに技術的な更新試験を行うなどの対策が必要との声も多くあがっています。

ふぐの免許統一の動きもあるものの課題も山積み

ふぐの免許に関する様々な問題に対して、(協)下関ふく連盟を中心に(一社)全国ふぐ連盟では、ふぐ免許の全国統一を目指し活動を行っています。
しかし、ふぐ免許やふぐ条例はそれぞれの地域(自治体)のふぐとのかかわりの歴史を反映している背景もあるため、なかなか容易な道のりではありません。

トラフグをさばく有資格者

東京都のふぐ調理師試験では、有毒部位の処理だけでなく刺身等の調理技術まで要求されます。これは除毒することより、調理する機会の多い消費地ならではの試験と言えるのではないでしょうか。
山口県のふぐ処理師試験は、各地への「みがき」の卸売りが多いため、有毒部位の処理までが要求される試験となっています。
ふぐ消費量が全国で最も多い大阪府では、もともとのふぐの知識が豊富なためか、学科・実技とも試験を行わず、講習受講だけで免許を発行しています。

たった3つの地域でもこれほどにも差がある試験内容をひとつにまとめるには相当な困難が予想されます。
しかし、最も根幹にある「フグ毒の適切な処理」という観点に立てば不可能ではないように思います。

近年発生しているふぐ中毒事件は、ほとんどが素人料理によるものです。
プロが調理した料理で中毒を起こした例は非常に稀にもかかわらず、ニュースとして大きく報じられるため、消費者の記憶に残ってしまいます。厚生労働省の免許統一への腰が重いのも、そういうところにあるのかもしれません。
それでも、ふぐの免許を持つプロの手で適切に処理されたフグは、一切中毒など起こさないという気概と仕組みは必須であることは間違いありません。

都道府県別 ふぐを扱うための資格制度

ふぐを扱うための資格の名称や、試験制度・講習制度の有無を都道府県別に一覧にまとめました。
各自治体でこんなにも免許・資格制度が異なるのかと驚かれるはずです。また、岩手県、山梨県では2016年2月時点では資格そのものが制定されておりません。
今後、ふぐを扱うための免許や資格が全国的に統一され、消費者にもわかりやすく安心できる制度への改革が進む事を願ってやみません。