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とらふぐ「稚魚放流地域」と「捕獲地域」での育成費の不公平感解消なるか?

魚類の中でも高級魚として知られるとらふぐ。その中でも、天然もののとらふぐは美味しさも価値も際立っているため多くのファンがいます。

しかし、天然とらふぐの漁穫量は年々減少傾向にあり、ふぐ業界では長年の課題となっています。

各地で行われているとらふぐ稚魚の放流

現在は天然とらふぐの資源回復・保護活動のため、日本各地で各団体によって稚魚の放流が行われています。

下関の「ふく供養祭」や「ふく延縄(はえなわ)漁船出航式」などの行事の中でも、とらふぐの稚魚の放流が行われています。この様子を新聞やテレビのニュースで見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、とらふぐの稚魚を放流している地域と、成魚となったとらふぐを漁穫している地域が異なるケースが多いのが実情です。
稚魚の育成費は放流地域が負担しているため、漁穫地域との不公平感が生じやすいことが課題になっています。

栽培漁業とは? とらふぐ放流地域と漁獲地域の課題

稚魚を育成して川や海に放流し、成魚を漁穫することを「栽培漁業」といいます。

栽培漁業の中でも、放流した川に帰ってくる習性があることで有名なサケは、「地先種」という魚種に分類され、放流する地域と成魚を取る漁獲地域が一致します。
ほかにはウニやアワビなども、放流した地域周辺の海底で育つため、放流地域で漁穫まで完結します。

一方で、とらふぐやクルマエビ、ヒラメなどは、都道府県の区域を超えて海を広く回遊する習性がある「広域種」に分類され、放流地域と漁獲地域が一致しません。
とらふぐは主に有明海や瀬戸内海で放流され、漁獲は東シナ海や日本海で行われています。

そのため、とらふぐの稚魚を放流している地域では、都道府県から稚魚育成を助成されているものの、放流地域と漁獲地域が一致していないことによって、「育て損」・「取り得」といった負担と受益の不公平感が生じやすく、その解消が課題となっています。

水産庁がとらふぐ稚魚育成費の公平負担化を検討

水産庁はとらふぐ稚魚育成費の課題に関して、漁獲地域にも育成費を公平に負担してもらう仕組みが必要であるとしています。

とらふぐの稚魚を増やすことが、ゆくゆくはとらふぐ漁獲量向上につながるよう、稚魚を放流する地域の都道府県の助成だけではなく、漁獲地域にも助成金の一部を支払ってもらう案が現在検討されています。

この案を検討するにあたり漁穫地域で取れたとらふぐが、稚魚育成地域で放流されたものかどうかを調べるため、2019年にDNAの解析調査が実施されます。これにより、漁穫量に占める放流ふぐの割合によって、漁獲地が負担する助成金の割合が決められる予定です。

とらふぐ稚魚育成費の公平負担化によって、稚魚を放流している地域の稚魚育成が盛んになり、天然とらふぐの資源回復・漁穫量増加に繋がっていくのか。今後実施されるDNA解析調査に、業界全体から注目が集まっています。
ふぐマガでも、今後の動向を注視していきたいと思います。

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