独特の食感と深い旨味が人気の「ふぐ」は、日本では高級魚として重宝されています。
日本以外でふぐを食べるのは、韓国や中国などのアジア圏の国が多いのですが、最近になってマレーシア北部諸州でも食用魚として流通しているそうです。
しかし、このふぐの食用に対して、マレーシア国内ではちょっとした物議になっているそうなんです。
マレーシアでふぐは廃棄される魚
マレーシア近海で生息するふぐは32種類が存在しています。
どれも有毒であるためにマレーシア国内では食用魚としては扱われず、網にかかっても全て廃棄されています。
もともとマレーシアでは赤身の魚よりも白身魚の方が高級魚として取り扱われ、高値で取引がされています。
これに目をつけたマレーシア北部のペナンやクダ、ペラなどの一部の漁師が、廃棄されるふぐを高級白身魚の代用として販売しようと、近年ふぐ漁を始めました。
ふぐは生鮮市場で「クリスタルフィッシュ」という名のもと、内臓などを取り除いた切り身の状態で1kgあたり500円前後で販売されているそうです。
この、販売されている切り身のふぐが物議をかもしています。
販売規制のないマレーシアのふぐ
マレーシアでは、ふぐは食用価値がないとされているため、販売や流通などに関する規制が存在していません。
そのため、ふぐの有毒部位の処理に関するルールもなく、切り身加工は全て業者に委ねられ、何の検査もないまま市場に流通してしまっているのが現状です。
ふぐ加工の内情はかなりずさんなものらしく、業者が雇った外国人労働者に、簡単な指示を出すだけで加工されているもよう。
ふぐに関する専門的な知識も技術もないまま加工することによって、ふぐの有毒部位である内臓や血液で切り身が毒に汚染する可能性があるため、とても安全とは言えない状態です。
マレーシア国内では、このような現状に懸念の声が上がり始めているようです。
今後のマレーシア法規制・改善に期待
マレーシア国内では、1985年から2014年までの間位にふぐ毒による健康被害が55件、死亡事故が17件発生しているとのデータがあります。
業者による無責任な加工が原因であることは明らかで、マレーシア保健省は除毒処理を行っていないふぐの販売を禁止する法律を、近く施行する計画を立てているそうです。
日本ではふぐ処理師等の有資格者が処理した際も、有毒部位である内臓等は鍵のかかる入れ物に入れて保管した後、専門業者により廃棄するなど、厳しいルールが存在しています。
安心・安全にふぐを食べることに長年力を注いできた日本から見れば、マレーシアの業者のふぐに対する認識の甘さ・対応に驚くばかりです。
正しく処理をすれば安心して食べられ、この上なく美味しいふぐのイメージが、こういったずさんな業者のせいで悪くなるのは避けたいものですね。
今後施行されるであろう法規制によって、マレーシア国内でも安心・安全なふぐ食が普及していことを願います。
そして、ふぐ食が世界的に普及していけば、ふぐ処理に関する世界基準のルールも必要になってくる日がくるかもしれませんね。