ふぐニュース

養殖フグ肝は安全か? 揺れるフグ肝論争

猛毒テトロドトキシンを含むトラフグの「肝臓」は、その危険性から食用が法律で禁じられています。
しかし昔からフグの肝は美味とされ、違法提供をした店が摘発されるニュースが後を絶ちません。

禁断の味とも呼べるフグ肝。現在、その食用提供を巡って佐賀県と、全国のフグ料理店・水産関係者ら約1800人で構成される「全国ふぐ連盟」の意見が真っ向から対立しています。

フグ肝解禁を求める佐賀県と水産業者

今年の2月、「エサをコントロールすれば、無毒ふぐを養殖することができる」としている佐賀県の水産業者の依頼を受け、佐賀県の山口祥義知事が厚労省に養殖トラフグの肝を食用禁止規定から除外してもらう「特区」の申請を行いました。

この水産業者では、殺菌した海水を使用した陸上施設で養殖を行い、すべてのトラフグの肝の最も毒性の高い部位を、一つずつ検査する仕組みを構築しました。
佐賀県はこの検査方法を妥当と評価しているようです。
この申請が認められれば、佐賀県は「町おこしの起爆剤になる」と期待を寄せています。

反対する全国ふぐ連盟と下関市長

一方、佐賀県の申請を受け全国ふぐ連盟は「検査は十分ではない」「肝は安全だという誤解が広がってしまう可能性がある」「もし被害が出れば、積み上げてきたふぐへの信頼が損なわれてしまう」とし、厚労省へ許可をしないよう求めています。

また、トラフグ取扱量日本一を誇る山口県下関市の中尾友昭市長も「フグの食文化から言っても邪道であり、認められれば、肝を食べても大丈夫という誤った認識が広がりかねない」と記者会見で語っています。

ふぐの毒ってどれくらい危険なの?

フグ毒は「テトロドトキシン」と呼ばれる青酸カリの約1000倍の毒性のある物質です。肝臓だけでなく、卵巣、種類によっては皮や筋肉にも含まれ、通常の加熱調理程度では壊れることはありません。
そのため、現在は有毒部位の販売・提供は食品衛生法により禁止されているのです。

ふぐの猛毒については、こちらの記事(https://www.fugu-sakai.com/magazine/learn/2491/)でも、詳しく取り上げています。

これまでにもフグ毒によって、過去15年間に356人が食中毒になり、10人が亡くなっています。
フグ毒についてはまだ全容が解明されておらず、解毒剤もないことから、ふぐ処理に関する免許を持たない者が食用として人に供することが厳しく制限されているのも納得できるかと思います。

1年以内には食品安全委員会が判断

厚労省は4月末に内閣府の食品安全委員会にリスク評会を諮問。5月10日には食品安全委員会で最初の審議が行われ、今後も審議が重ねられます。
もし今後の答申で安全性が認められれば、ふぐ業界のみならず水産業全体に大きな衝撃となることは間違いないでしょう。

しかし、わざわざ有毒であるフグ肝を食べずとも、他にもアンコウの肝など無毒で美味しく安全に食べられるものはたくさんあります。
人命に関わる危険性があるものを、急いで認める必要はないのかもしれません。

食品安全委員会は1年以内にも、佐賀県の提案に判断を下す方針です。
今は審議を待つしかありませんが、国の判断がどちらに転んでも、業界に関わる人々、そしてそれを選ぶ我々消費者が、慎重に判断・選択していく必要があるのではないでしょうか。

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