冬の最高級食材として親しまれているトラフグをはじめ、様々な種類のふぐの多くが猛毒「テトロドトキシン」を持っていることで知られています。
そのため、ふぐの素人調理は食品衛生法で禁止されているのみならず、海のなかでも天敵が非常に少ないといわれています。
そんななか、最近では「ウツボ」がテトロドトキシンに耐性を持つ可能性があり、解毒剤につながるのではないかという期待の声が上がっていることをご存知でしょうか?
今回は、ふぐにとっては数少ない天敵ともいえる「ウツボ」についてご紹介します。
釣り上げて放置は危険? 鋭い歯を持つウツボ
ウツボは、ウナギ目ウツボ科に分類される魚です。世界中の暖かい地域に分布しており、浅海の岩礁やサンゴ礁などに生息しています。「ウツボ」という名前は長い矢を入れる容器の「靭」(うつぼ)が由来となっている説があり、全長1メートル前後の細長い種類が多いのが特徴です。
ウツボは大きな口でアゴの力が強く、鋭い歯を持つ大型の肉食魚であり、海中では他の魚以外にもエビやカニなどの甲殻類を好んで捕食し、特にタコにとっては一番の天敵とされています。
また、人間でも潜水中に遭遇したり、釣り上げて磯に放置していると噛まれて怪我をする危険がありますので注意が必要です。
そしてウツボは鋭い歯を持つだけでなく、喉の奥には第二のアゴともいわれる「咽頭顎」という捕食した獲物を食道に送り込む器官を持っているのが大きな特徴となっています。
ウツボがふぐ毒の解毒剤につながる可能性も?!
猛毒「テトロドトキシン」を持つふぐは、海のなかでも他の魚が毒を本能的に察知し襲うのを避けているという説があり、天敵が非常に少ないとされています。
ところが、近年は「ウツボ」が海岸の波打ち際へ産卵にやってきたクサフグを襲っているところが頻繁に目撃されており、インターネット上ではその様子を撮影した写真や動画もアップされています。
2020年6月には、水中カメラマンの方が千葉県鴨川市の海岸でウツボがクサフグを襲うところを撮影し、そのままふぐを飲み込んだウツボを捕獲して海洋生物の毒を研究している広島大学に解析を依頼したところ、ウツボの胃のなかでふぐの消化が進み、内壁にはふぐ毒が検出されたそうです。
これまではふぐが大きな魚やカモメに食べられてしまうことはあっても、テトロドトキシンに対する耐性を持っておらず毒に当たっている可能性が高いとみられていました。
しかし、ウツボが強い毒性を持つことで知られるクサフグの産卵を狙って餌として食べているのであれば、テトロドトキシンに当たらない何らかの耐性を持つ可能性があり、解毒剤の開発や治療法の確立へ役立つことが期待されます。
素人調理は危険! 熟練の職人によるふぐ料理を堪能しよう
ふぐが持つ猛毒「テトロドトキシン」は、これまで多くの研究者たちによって長い年月をかけて研究が進められてきた歴史があります。今回ご紹介した「ウツボ」によって長年にわたるふぐ毒の謎が解き明かされ、より安心してふぐが楽しめる日がくるかもしれませんね。
しかし、現時点ではふぐ毒に対する解毒剤はなく大変恐ろしいことには変わりありませんので、資格のない素人によるふぐの調理は危険です。ご家庭でふぐ料理を楽しみたいという方は、ふぐの本場・下関で熟練の知識と技術を持った有資格者の手によって調理されたふぐ料理をお取り寄せ・通販することもおすすめですよ。