ふぐ取扱量日本一を誇る、山口県下関市の「南風泊(はえどまり)市場」は、日本唯一のふぐ専門市場です。
全国各地の漁場や養殖場から南風泊市場へ運ばれてきたふぐは、「袋競り(ふくろぜり)」と呼ばれる独特の競り方法で次々と価格が決まっていきます。
毎年9月のふぐシーズンの始まりと、1月の年初に行われる袋競りの様子は、ニュースや新聞でも取り上げられるほど注目度の高い恒例行事のため、テレビや新聞などで一度は「袋競り」の情報を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は全国でも類を見ない、珍しい競りの方法といわれている「袋競り」について、詳しくご紹介いたします。
「袋競り」とはどんな競りの方法?
「袋競り」は黒い筒状の袋の中で、競り人の指を仲買人が何本握るかで価格が決まる、かなり独特な競り方法です。
現在この競り方法を採用しているのは、ふぐ専門市場である南風泊市場のみなのだとか。
競り場では、「袋競り」の始まりを知らせるベルが鳴り、筒状の袋に片手を入れた競り人が「ええか、ええか」という威勢のよい掛け声をかける中、仲買人が袋の中で競り人の指を握って買値を伝えます。
この袋の中では、競り人(売り手)と仲買人(買い手)によるかなり高度な駆け引きが行われています。
仲買人が競り人の人差し指1本を握ると「1」、人差し指と中指の2本で「2」、人差し指と中指、薬指の3本で「3」、人差し指と中指、薬指と小指で「4」、4本の指に親指を加えて「5」を表しています。「6」以上は、最初に指を1本握り、そのあと指を何本引くかによって示されます。
買値の基準となる単位は、その時点での相場に応じて定められます。
その単位に、握った指で示された数字を乗じたものが仲買人の買値希望額になります。
仲買人はふぐの値打ちを素早く見極める力量が問われるため、袋競りに参加するにもかなりの経験が必要になるそうです。
まるまる太った大きなとらふぐが複数匹入ったトロ箱1つが、数十秒ほどで次々と競り落とされていくという、驚きのスピードで競りは行われています。
競り落とされたふぐは、関東や関西を中心に全国へ出荷されます。
かつてはふぐの落札をめぐり喧嘩も?! 袋競りの起源
「袋競り」の起源は諸説あります。
ふぐは他に代用がきかない高価かつ価値のある魚のため、昔は競り場でふぐの落札をめぐり喧嘩になることがありました。そこで値段の駆け引きを周りの人に見えないよう、袋の中で隠れて行うために「袋競り」が生まれたといわれています。
また、昔は袖の長い雨具(カッパ)を着ていたため、その袖口に手を入れて競りを行っていたことが袋競りの起源であるとも言われています。
時代とともにカッパを着用しなくなり、今の黒い袋を利用することが定着したようです。
袋競りを見るチャンスは年2回?
袋競りの様子を年2回、テレビのニュース番組で見られる機会があります。
1つめはふぐシーズンの幕開けを告げる毎年9月の「初競り」。
そのシーズンのふぐの市場価格動向を知る意味でも大切な行事です。
2つめは毎年1月、年明け最初に行われる新春の「初競り」。
その年初めての競りであることから、新しい年の訪れとともに縁起をかつぐ意味も込める関係者も多いのだとか。
「ふぐの袋競り」がニュースや新聞で取り上げられたことがきっかけで、報道を見た人々がふぐ料理を食べにくることも多く、下関の街の活気づけに貢献しています。
「袋競り」のニュースを目にする機会がありましたら、袋の中の手の動きや競りのスピード感にも是非注目してみてくださいね。