ふぐを知る・学ぶ

テトロドトキシンだけじゃないフグの毒

ハコフグ

お皿が透き通るほど薄く切ってもりつけられたふぐ刺し。
カラっと揚がった衣の中から、じゅわっとあふれ出す旨味がたまらないふぐの唐揚げ。
淡白ながら旨味がぎゅっと詰まったふぐちりのあとは、ふぐの出汁がよく出た雑炊を楽しむ…。
どれもこれも、たまらなく美味しい「ふぐ料理」として知られています。

ふぐ料理に使用されるふぐの種類といえば「トラフグ」が有名ですが、トラフグには「テトロドトキシン」という毒があるため、安心・安全なふぐ料理を楽しむためには、ふぐ処理師など有資格者の手で適切に調理されることが必要です。

実は、ふぐ毒として知られている「テトロドトキシン」以外にも、別の種類のふぐ毒があることをご存知でしょうか?

ふぐ毒はテトロドトキシンだけではなかった!

ミナミハコフグ

ふぐの仲間は大きくフグ目に分類されていて、3亜目9科101属で構成され、357種も存在しています。「ふぐ」と一言でくくれないほど、たくさんの種類があります。

これだけ膨大な種類があるふぐの中には、ふぐ毒として知られている「テトロドトキシン」を持たず、皮膚から分泌する毒「パフトキシン(pafutoxin)」を持つふぐが存在します。

パフトキシンを持つのは、色鮮やかでユニークな体型や泳ぐ姿の愛らしさから観賞魚として飼育されることも多いハコフグ科のふぐで、ハコフグやウミスズメ、ミナミハコフグなどが知られています。

「ギョギョギョ!」のセリフで知られる「さかなクン」がかぶっている帽子も、ハコフグがモチーフになっているので、ハコフグという名前をご存知の方も多いかもしれません。

毒性物質パフトキシンを持つハコフグとは?

ハコフグは一般的によく知られているトラフグなどとは異なる見た目をしています。鱗や皮膚が硬く全身を装甲するような甲羅状で棘はなく、箱のような体が特徴です。

ハコフグの仲間は捕獲時など刺激やストレスを与えられると、皮膚から水溶性の毒性物質「パフトキシン」を粘液とともに分泌します。海で他の魚などに捕食されないよう、パフトキシンで身を守っているんですね。

ハコフグを飼育する際はパフトキシン放出の恐れがあるため、他の魚種との混泳は避けた方が無難です。また、自身が放出したパフトキシンによって、ハコフグ自体も死んでしまうこともあるそう…。
そのため、ハコフグを飼育する際はストレスフリーな環境を提供してあげることが必要です。

ハコフグは食べられる?

長崎県の五島列島では、ハコフグのお腹を丸く切って内臓を処理した後、ハコフグの身と味噌、酒、きざみネギなどを混ぜ合わせ、再び甲羅に戻しホイル焼きにした郷土料理が地元の人に親しまれています。

しかし、過去には「パリトキシン(palytoxin)」という毒性物質が蓄積していたハコフグを食べて、中毒症状が出た例がわずかですが報告されています。
有毒物質が蓄積される原因は、パリトキシンを持った生き物をハコフグが食べる食物連鎖からなるようで、同様のことがアオブダイやソウシキハギでも知られています。

パリトキシンはトラフグなどが持つテトロドトキシンよりも強力な毒性物質です。
パリトキシン摂取後の潜伏期間は12〜24時間と長く、主な症状は激しい筋肉痛やミオグロビン尿症で、呼吸困難や麻痺、痙攣などを起こすこともあるそうです。それらが重篤な場合は、十数時間から数日で死に至ることもあります。(厚生省ホームページより)

ハコフグは毒性物質を持っているため、筋肉と精巣(白子)のみ食用可能です。また、調理はふぐ処理師等の有資格者に限られています。

安全においしいふぐ料理を楽しむために

まさか、ふぐの毒にも種類があるとは! と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
適切な処理をすれば、毒を持つふぐであっても美味しく食べられる文化を築き上げてきた、先人たちの工夫には頭が下がる思いです。

今回ご紹介したハコフグ料理も、わざわざ飛行機に乗って食べに行く方もいるほど美味しいものだそうです。
適切な資格を持った方に調理していただき、安心して美味しいふぐ料理を楽しんでいただきたいと思います。

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