ふぐは昔から毒がありながらも美味と知られていたことから、その魅力に翻弄されてきた情景を、様々な歌人や俳人が歌にしてきました。今もなお、ふぐを題材にした短歌、俳句、川柳等が残っています。
歌よりももっと日常的に使える昔からの言葉のひとつに「諺(ことわざ)」がありますが、ふぐが登場することわざも多く存在しているのはご存知でしょうか?
今回はそんなふぐにまつわることわざをご紹介いたします。
「ふぐ」の最も有名なことわざ
「ふぐ」という言葉が入ったことわざは?という質問をしたら、多くの方がこのことわざを挙げるのではないでしょうか。
「河豚は食いたし命は惜しし(ふぐはくいたし いのちはおしし)」
美味しいフグは食べたいが、毒に当たって死ぬのは嫌だという言葉通りの意味の裏に、いい思いはしたいけれど、それに伴うリスクは怖いから簡単には踏み切れず迷っている様子のこと。
昔の人もふぐの美味しさと万が一のことを天秤にかけ、食べることをためらっていたのでしょうね。
毒があっても美味しいふぐは食べたいという思いは、今も昔も変わらないのかもしれません。
他にもまだまだあるフグのことわざ
よく調べてみると、「ふぐ」が入ることわざはまだまだありました。
「河豚食う馬鹿河豚食わぬ馬鹿(ふぐくうばか ふぐくわぬばか)」
毒を持つふぐを食べて命を落とすのは愚かだが、怖がって全く食べずふぐの美味しさを知らないことも愚かだという意味。
フグの美味しさと危険に乱れる人々の心を、皮肉を込めて表現しています。
「河豚にもあたれば鯛にもあたる (ふぐにもあたれば たいにもあたる)」
運が悪い時には何を食べても当たってしまうということ。つまり、いつどこで災いが起こるかわからないということのたとえ。
「ふぐ食った猫の腰(ふぐくった ねこのこし)」
ふぐを食べて毒にあたってしまった猫の腰のようにフラフラしている様子をさし、「腰抜け」であることをあらわすことわざ。
縄文時代から食べ続けられ、豊臣秀吉によるふぐ食禁止令が出ていた中でもこっそり食べる人が続出するなど、昔から多くの人に愛され続けていたふぐ。
こういったことわざが残っていることからも、いかにふぐが特別な存在であったかが伺い知れます。
ことわざからわかるフグの魅力
今でこそふぐ免許などの制度が整い、安心してふぐ料理を食べられるようになりましたが、制度が整う前は文字通り命がけでふぐを食べていた時代もあったのでしょう。
それほどまでに強く「食べたい」と思わせる、美味なるふぐの魅力はいまも昔も変わらないということですね。
現在は法令で定められた有毒部位を有資格者の手で除かれ、手順通りにさばかれた安全なふぐを食べられるようになったため、「河豚は食いたし命は惜しし」という思いでふぐ料理に向き合わずに済むようになりました。
長い年月をかけてふぐについての研究・技術が磨き続けられてきたからこそ、今の安心・安全なふぐ料理があるのだと思うと、沢山の人に感謝しながら味わいたいものですね。
そしてふぐのことわざを話のネタに、美味しいふぐ料理に舌鼓を打つのもおつかもしれません。