ふぐを楽しむ

ふぐを題材にした落語

特に若い世代には取っ付きにくいと思われがちな落語。
しかし、近年は子供番組で「寿限無」を暗唱するコーナーが設けられていたり、落語を題材にした漫画がアニメ化されるなど、知らず知らず落語に接する機会が増えてきているように思います。

そんな落語に、ふぐを題材にした話があるのはご存知でしょうか?

ふぐ免許制度もない時代に生まれた落語

ふぐを題材にした話は、古典落語のひとつ「河豚(ふぐ)鍋」。
古典落語は江戸時代から明治・大正時代にかけて作られたもので、「時そば」や「目黒のさんま」、「饅頭こわい」などの話は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

そんな古典落語の中でも知る人ぞ知る「河豚鍋」は、当時ふぐ免許制度もなく一般庶民でも簡単にふぐが手に入ることから、フグ毒による死亡事故が後を絶たなかった時代背景の説明から始まります。

落語「河豚鍋」のあらすじ

ある男の家に久々に訪ねて来た客人をもてなすため、男の妻が酒と鍋を用意したものの、この鍋に入っていたのはフグだったため、男も客人も怖がってなかなか箸をつけようとしません。
そこに、物乞いが「お余りを、お余りを」と現れたため「ちょうど良かった、物乞いが何ともなかったら我々も食べようと」ふぐ鍋をよそって物乞いに分け与えました。

客人が物乞いの後をつけて様子をうかがってみたところ、皿は空になり気持ち良さそうに寝息を立てて寝ていたため、家に戻り男へその様子を報告しました。
安堵した男と客人は「いち、にの、さん」で同時に鍋のフグを食べました。
その美味しさに驚いたふたりは、競い合うように雑炊までもペロリと平らげたのです。

そこに先ほどの物乞いが現れ「もう全て召し上がられましたか?」と聞くので、家の男はふぐ鍋の美味しさに味をしめてまた来たんだなと思い「もうすっかり食べてしまったよ」と伝えました。

すると物乞いはこう言ったそうな。
「そうですか。それならわたしは、これからゆっくりいただきます」

安心して美味しいふぐを食べられるありがたさ

古典落語は庶民に親しまれてきた笑いの伝統芸能で、当時ふぐ毒がいかに恐れられていたかがオチからも伝わってきます。

現在はふぐ免許制度も各自治体でしっかりと整えられ、また下関では仲卸業者がしっかりと除毒を行った「ふぐの身欠き(磨き)」を出荷しているなど、毒への対策は万全であると言えます。

ふぐの旬である今、毒にあたる心配をせず安心してふぐを食べられることに感謝しながら、美味しく楽しくふぐ料理をいただきたいですね。

ふぐ丸のコメント

ふぐ丸のコメント

地方にいるとなかなか落語を聴く機会はありません。
また、「河豚鍋」という演目はそれほどよく耳にするものではないそうです。

ところが以前、「下関市立しものせき水族館 海響館」内のフグコーナーでこの話の映像を流したいと、VTR収録のため落語家の桂吉弥師匠に「河豚鍋」を株式会社酒井商店が運営するとらふぐ専門料理店「ふぐ処さかい」の座敷で演じていただき、幸運にもこれに立ち合うことができました。

至近距離で落語を楽しませていただきましたが本当に素晴らしいもので、物乞いの最後の台詞なんて知っていても大笑いでした(もちろん声は出せませんが)。
河豚鍋をはじめ、素晴らしい落語の世界を是非若い世代にももっと楽しんでもらいたいものですね。

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