新種18,000種の中から、新種TOP10に選ばれたのは日本のフグ
2015年5月21日、国立科学博物館は奄美大島(鹿児島県奄美市)沖の海底で直径2メートルもの美しい「ミステリーサークル」を描くフグが、2015年(平成27年)の「世界の新種トップ10」に選ばれたと発表しました。
「世界の新種トップ10」とは、国際生物種探査研究所(米ニューヨーク州立大学)が、全世界から報告される生物約18,000の新種の中から特筆すべき新種を毎年発表しているものになります。
奄美大島の海底では、しばしば謎のミステリーサークルがダイバーらに目撃されていましたが、何年も前からその真相は説明がつかないものでした。今回、その謎を解き、新種の魚を発見したことがTOP10に選ばれた理由に結びついたそうです。
なお、日本から報告された新種がトップ10入りしたのは今回が初めてのことで、関係各所からは喜びの声があがっています。
海底の素晴らしい芸術家、アマミホシゾラフグ
2011年に水中写真家の大方洋二さんが初めてこの魚の巣作りの様子を目撃。その3年後の2014年、国立科学博物館の松浦啓一名誉研究員ら調査チームによって、このフグが新種であることが判明しました。
体に星をちりばめたような模様から、「アマミホシゾラフグ(学名Torquigener albomaculosus)」と命名・発表されました。
アマミホシゾラフグのオスは春から夏の産卵期に、海底の砂地に直径約2メートルのミステリーサークルのような産卵巣を1週間かけて作ります。全長10~15センチほどのアマミホシゾラフグが作ったとは思えないほどの大きさには驚かされます。
産卵巣は外側に二重の土手があり、中心部から放射状に20数本の線が伸びている複雑な模様になっています。この模様に誘い寄せられたメスが中心部で産卵をするのです。
美しくも複雑な産卵巣の模様は、潮の流れや捕食者から卵を守る役目も担っていると言われています。
「海には不思議な生き物がいると、一般の人にも分かってもらえるチャンスだ。注目してもらう事で研究が進めば良い。」と松浦啓一名誉研究員は期待を寄せています。
西日本ふく研究会でも話題に。
アマミホシゾラフグが新種トップ10に選ばれてから9日後の2015年5月30日、下関で開催された西日本ふく研究会にて、発見者である水中写真家の大方洋二氏と、研究者の国立科学博物館名誉研究員 松浦敬一氏の講演がありました。題材はもちろん「アマミホシゾラフグ」。
アマミノホシゾラフグの興味深い生態は、 2012年にNHK「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」で取り上げられていたため関心を寄せている方も多く、貴重なお話に皆様真剣に耳を傾けていました。
日本の新種のふぐが世界で話題になったことは、ふぐ業界にとってもおおいに喜ばしいニュースとなりました。