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ふぐの生態系に異変?ショウサイフグとゴマフグの交雑が発見

ふぐと言えば「トラフグ」を連想される方が多いとは思いますが、トラフグとは別の種類である「ショウサイフグ」と「ゴマフグ」の生態系に、今異変が起きていることはご存知ですか?

山口県下関市にある水産大学校の高橋准教授ら(国立研究開発法人水産研究・教育機構)が5月24日、ふぐの大規模な交雑を発見したと発表しました。
これは、日本のふぐの生態系を脅かすかもしれない重要なニュースであると、今ふぐ業界でも話題になっています。

調査対象の55%以上が雑種だと判明!?

2012年から2014年にかけて、茨城県、福島県、岩手県などの東日本沿岸域において種類不明のふぐが大量に漁獲されたことを受け、高橋准教授が同時期に採取した252個体のDNAを調査・解析をしました。
その結果、55%以上がショウサイフグとゴマフグの雑種であることが判明しました。

ショウサイフグは、主に太平洋や東シナ海などに生息しています。
皮に棘がないためお腹がつるっとしていること、また尻びれは真っ白なのが特徴です。
江戸時代の川柳などに登場する「ふくとう汁」には、ショウサイフグが使われていたといわれるくらい、昔から食卓に並んでいた日本人に馴染みの深いフグです。

一方ゴマフグは、主に日本海・東シナ海に生息しており、背中とお腹にある棘と、尻びれの美しいレモン色が特徴です。食卓では鍋で食べることが多いフグです。

そんな見た目も生息域も異なる2種類のフグが交雑し、見た目も混ざった「雑種」が大量に発見されたことにより、フグのプロも頭を悩ませています。

雑種が増加すると純粋種のフグが絶滅する?!

今回判明した雑種のフグですが、通常の純粋種のふぐと比較しても非常に見分けがつきにくく、「めきき」をするのはプロでも難しいそう。
というのも雑種の場合、個体差が大きいため両親の種類判別が難しく、毒が存在する部位も両親と異なるものもあるようです。

もしクォーターやそのまた子孫などが生まれ、めききがより困難になれば、安全な天然もののショウサイフグ、ゴマフグの供給に影響が出る可能性があります。
また、雑種の増加は最悪の場合、純粋種の絶滅につながることもあるのだとか。

ショウサイフグとゴマフグの雑種が東日本沿岸域で増加した理由のひとつは、地球温暖化により海水温度が上昇したため、ゴマフグが津軽海峡を超え太平洋側へ生息域を拡大してしまった可能性があるようです。
地球温暖化は生態系への影響も確実に出ているため、看過することのできない問題として、個々の意識改善はもちろん、国際的にも早急な対策が求められます。

雑種のめきき技術の向上により回避できるか

雑種の増加が進んだ場合、フグの安全性への影響が懸念されますが、この問題を解決しようと水産大学校では「下関の『ふく』の差別化と輸出拡大のためのIT利用『めきき』技術の開発」というプロジェクトにて、「雑種鑑別めきき技術の開発」「品質めきき技術」の開発が進められています。

「雑種鑑別めきき技術の開発」は、スマートフォンでふぐを撮影し送信すれば、毒がある部位や雑種の掛け合わせなどが判別できるようになるシステムです。
一方「品質めきき技術」は、現場で身欠き加工されたふぐの品質を評価し、毒の有無を判別できるシステムです。
両技術ともすでに開発が進んでいるそうで、水産大学校からも開発の成果が報告され始めています。

このような雑種に関する研究・めききの技術の開発は、漁業現場での判別作業の効率化を図るとともに、下関のふぐの安全性の高さを示すことにつながるかもしれません。
こういったアクションを迅速に起こすのは、さすがふぐ取扱量日本一を誇る下関ですね。

とらふぐ料理への影響は?

今回雑種が発見され、その安全性が懸念されているのは、ショウサイフグとゴマフグのみです。
ふぐ料理店などで取り扱われているトラフグは無関係ではありますが、今回のこの発見でトラフグへの風評被害が出ないかと、業界関係者は不安を抱えています。

これまで下関を中心に、ふぐを安心・安全に食べられるよう、品質・技術の向上に尽力してきた方達からしたら、その心配もごもっともだと思います。

我々消費者は、今回のニュースにあがっているふぐの雑種とトラフグは別のものであるという認識を深め、これまで通りおいしくトラフグ料理をいただくことが、結果として日本古来から続くふぐ文化を守っていくことにつながるのではないでしょうか。

今後もふぐマガでは、雑種ふぐの動向に注目していきたいと思います。

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