9月1日に出航式が行われてから本格的なふぐシーズンまっただ中の下関。
まさに書き入れ時にも関わらず、関係者の顔には不安の色が広がっています。
その背景には、従来低価格で需要が大きい養殖トラフグの市場価格の高騰があります。全国の指標価格となる下関市の南風泊(はえどまり)市場では、卸値が昨季の2倍程度で推移しているため、「価格が高すぎると消費離れにつながるのでは」と懸念の声も聞こえています。
価格高騰の要因は?
なぜ、これほどまでに価格が高騰しているかというと、昨年までの相場が低迷していた反動により、養殖トラフグ業者が今年度は生産量を減らしていることが挙げられます。
2012年に行われた規制緩和により、東京都は専門の免許がなくても飲食店でフグを扱えるようになったことから、養殖業者は消費拡大を見越して生産量を増やしたものの、読み通りには消費が進まず供給過多となり、以降安値が続いていたのです。
結果、採算割れで廃業した業者も出たこともあり、今年は生産量を8割程度に留めていることと、夏場の低水温や魚病、赤潮の影響などにより入荷減に拍車がかかった形となっています。
消費拡大とブランド保持のほどよいバランスを
下関唐戸魚市場の原田社長は「フグはもともと高級魚です。下関で品定めした“下関ふく”ブランドのふぐとして、適正価格に戻ったのでは」と相場価格の回復に一定の評価をしつつも、「価格が高すぎると消費離れにつながる」と、さらなる高値には懸念を示しています。
冬の旬であるふぐは規制緩和や養殖普及などによって消費者に届けやすくなったものの、未だ「ふぐは高い」というイメージは払拭できないままでいます。
いかに“下関ふく”のブランド価値を保持しつつ、多くの方に比較的手軽に食べていただけるか。フグの街である下関の関係者は、これ以上価格が高騰しないよう見守りつつも、消費拡大に少しでも尽力したいと意気込んでいます。
私たち消費者にとっては、今後の価格動向も気になるところですが、美味しいふぐを安定して供給し続けていただきたいと心から願うばかりです。